「日本国憲法9条は法律用語で書かれた福音書である。我々日本人の悔い改めの証であり、世界に向かっての信仰の告白である。」これは角田儀平治の言葉である。角田儀平治は1906年に群馬県に生まれ、東大在学中に弁護士の資格を得るや直ちに法廷に立ち、治安維持法違反の人々を弁護するため全国はもとより、遠く朝鮮・満州等でも活躍した。 彼自身、治安維持法違反で逮捕され、
一審は実刑2年、当時の東京控訴院で執行猶予4年の判決を受けた入物であり、私の父でもある。1937年にカトリックに入信し、60有余年、誠に真摯なカトリック信者であった。その言葉が冒頭の彼の言葉である。この言葉をモットーに彼は権力に追随することなく、戦後も活躍し続けた。日本の将来を見つめた場合には治安維持法の犠牲者は当然国家から補償を受ける権利がある。それを実現するためにはもっと幅広い国民的な運動を展開しなければならない。これが父の遺言でもあるような気がする。
(元参議院副議長・弁護士)
2011年6月15日不屈(毎月15日発行)N0.444 (3)