試写室
こころの時代フクシマを歩いて
NHKEテレ14日前5・0/原発を問う深い思索
福島第1原発事故は人類にとってどんな意味を持っているのか、さまざまな角度から語るべき時です。在日2世の作家、徐京植(ソ・キョンシク)さんが被災地を歩き考えます。
キーワードとしたのが「根こぎ」。徹底的に引き抜くことです。徐さんは原発事故を「根こぎ」ととらえます。多くの人が避難した南相馬で、認知症が進んだ妻とともに、その地に残り生活を続けるスペイン思想研究家・佐々木孝さん、耕作禁止の田で草を刈る農民と語らいます。いわきでは子どもが消えた朝鮮学校へ。対話には「根こぎ」に抵抗する人々への真摯(しんし)な共感があふれます。
徐さんは、ナチスによるアウシュビッツ、原爆投下という歴史の文脈に「フクシマ」を置きます。そしてアウシュビッツを生きた作家、プリーモ・レーヴィ、被爆を生きた詩人、原民喜をよりどころに「根こぎ」により「非現実が現実になってしまった」とき、人はどうすべきか、「根」とは何かを問うのです。深い思索が詰まっています。
(荻野谷正博)
( 2011年08月13日,「赤旗」)