国家と政府 ジェームス三木
国家権力が国民を弾圧し言論を封殺する目的は、はっきりしている。指導者がおのれの政治権力を守り、維持するためである。
そもそも国家とは何か。
定の領土と国民を持ち、価慎観を具有する統治システムというが、その定義はあいまいで、私たちは誰も国家を見たことがないし、さわったこともない。つまり国家そのものには、人格も意志もないので、国民を弾圧したり、他国を侵略することはあり得ない。
実は国民をあざむき、戦争を引き起こすのは、時の政府であり、国家になりすました権力者である。国民の権利を踏みにじり、犠牲を強いた責任は、権力を継承する政府がとらなければならない。
国家と政府をごっちやにするのは、権力者の思うツボである。きちんと識別しなければまた編される、国家といってしまえば、私たち国民もふくまれるのだ。
(脚本家)
不屈中央版 №448(3)2011年10月15日号 (毎月15日発行)