横浜事件、免訴の再審判決
横浜地裁、拷問の事実に言及
戦時下最大の言論弾圧事件「横浜事件」で、治安維持法違反で有罪が確定した元「中央公論」出版部員の故・木村亨さんら5人(全員死亡)に対する再審判決公判が9日、横浜地裁で開かれ、松尾昭一裁判長は無罪か有罪か判断せずに裁判を打ち切る「免訴」判決を言い渡した。治安維持法が廃止されたことを理由に形式的な判断を示す一方、当時の取り調べで拷問が行われた事実に言及。「訴訟記録が廃棄され、確定判決が残っていない事態もあってかなりの時間を要し、被告らが死亡して再審裁判を受けることができなかったのは誠に残念」と述べた。
弁護側は約60年前の判決の証拠とされた自白は拷問による虚偽の内容で事件はでっち上げだったと主張。事実認定に踏み込んだうえで無罪を言い渡すよう求めてきた。
事件は42年から終戦直前にかけ言論、出版関係者約60人が「共産主義を宣伝した」などとして治安維持法違反容疑で逮捕され、拷問で4人が獄死。終戦直後の45年8~9月、約30人が横浜地裁で有罪判決を受けた。
元被告らは86年から4回再審請求したが03年3月までに全員死亡。同4月に横浜地裁が再審開始を決定した。東京高裁は05年3月、拷問の事実を認定、「自白の信用性に顕著な疑いがある」として検察側の抗告を棄却、再審開始が確定した。
公判には元被告の遺族が証人出廷し「十分審理をせず有罪を言い渡し、再審請求を退け続けた司法の責任を認め、謝罪してほしい」と訴えた。
2006年02月09日14時21分 asahi.com 社会>裁判