七 二十一世紀の流れの中で同盟運動の展望を考える
二十一世紀の世界は、植民地体制の崩壊、民族自決権の前進、国民主権と民主主義など二十世紀に進行した巨大な変化を基礎に、また世界大戦による世界的な惨禍の経験から、戦争を違法化し、平和な世界秩序の確立、共同と共存、人権尊重などが世界政治の主流となっている。
このなかでアメリカは世界軍事費の約五〇パーセントを占める圧倒的戦力を武器に干渉と侵略で世界秩序への逆流となっている。小泉自公政権は、このアメリカに追従し、戦争枝への道を進めているが、それはアメリカとともに世界から孤立する道にほかならない。
しかも平和な世界秩序、人権尊重の二一世紀の世界は過去の誤りを誤りとして精算して進む時代に入っており、戦後補償の拒否など合理化できる法的根拠は全くない。「戦争犯罪と人道に反する罪に時効なし」とする国際法に照らしても許される時代ではなくなっている。
ご承知のように、ドイツ、イタリア、アメリカ、カナダでは、第二次世界停戦中の人権侵害の非を認め、被害者の補償と名誉回復を済ませている。韓国では日本植民地時代の治安維持法犠牲者を民族独立運動の貢献者として表彰し、年金を支給している。また韓国中央情報部(KCIA)による拷問で死亡した事件の遺族に対する国家賠償で、ソウル高裁が国家犯罪に時効はないと判決した。政府はこの判決を受け入れ、「国家犯罪の時効を認めない」立法化を進めようとしている。
しかもカナダでは、百年以上も前の一九世紀後半におこなった中国系移民差別問題で、今年の四月四日の首相施政方針演説は被害者八万人に対して「謝罪するための行動を取る」ことを表明している。イタリア政府は、七月三日、一九一一年から三〇年以上に及んだリビア侵略と植民地支配がもたらした損害賠償を支払うべき義務があることを明らかにした。昨年七月、フランスの旧植民地マダガスカルをシラク大統領が訪問し、植民地からの独立運動弾圧事件で、拷問や処刑で多数の死者を出したことに謝罪し、事実を掘り起こし、心に平安をもたらしうる記憶の作業に取り組むことを約束している。
日本でも、今年の七月「原爆投下を裁く国際民衆法廷」が開かれ、原爆投下当時のトルーマン大統領や政府閣僚、大統領命令の実行軍人ら一五人を有罪とする判決を発表した。アメリカのイラクでの無差別爆撃、捕虜虐待・拷問に対する告発・批判も高まっているが、やがては裁かれるときがくるであろう。それが二一世紀の大きな流れである。
この世界の流れに逆らう小泉自公政権の侵略戦争正当化、アメリカいいなりの異常な政治に対決し、戦後補償を求める諸組織、レッドパージ全国センターなどとの連帯・共同を追及しながら治安維持法犠牲者国家賠償法の立法化の旗を高く掲げて、ねばり強く闘うことで展望を切り開くことができることを訴えなければならない。それは平和な世界秩序を確かなものにする二一世紀の本流の促進にも貢献することになるであろうことを確信する。
「戦後補償問題のなかで同盟運動の先駆性と展望を考える」 近江谷昭二郎
2006年9月15日 月刊不屈 №387号 から