顕彰碑探訪
ひとときを/心呆けてゐしわれか
手を動かせば手に手錠あり
プロレタリア歌人 渡辺順三
渡辺順三は、一九二九年にプロレタリア歌人同盟を結成した時から、プロレタリア短歌を牽引してきただけでなく、たえず代表者となってきました。治安維持法違反で二度検挙・投獄されています。
作品は戦後になってすぐに発行された『新しき日』という歌集に収められているものです。
他に、
われはきたなき労働者なり/むすめ!/むすめ!/顔をそむけよ
この一夜/遠くロシヤの革命に/心馳せて友と語れる
などが口誦されてきました。
生まれは、一八九四年で、富山県の出身です。早くから文学に親しみ、父の死後上京して家具屋の小僧をしながら勉強をし、二十歳のころから短歌を始め、窪田空穂に師事していますが、それは空穂の民衆短歌に共鳴したからでしょう。
戦後は「新日本歌人協会」の代表を最後まで務めました。
著書は多く、なかでも『近代短歌史』上・下は現在も歌壇の役割を論ずるときは、規矩としての役割を果たしています。私は亡くなる前に二度代々木病院で会っています。とても小柄でいかにも学者風という感じでした。小さな声で話してくれました。自分の経歴は、強かったからではなく、そんな運命の中にいただけなのです。と語っていたのが印象的でした。
小木宏(現代歌人協会会員)
2007年3月15日 不屈中央版 №393号