同盟歌壇 碓田のぼる選
静岡県 江川佐一
くり返しそぼ降る雨を気にもとめず蜘蛛は巣づくる綱渡りして
〈評〉人間の生きる問題を重ねながら作者は蜘蛛を見ている。
和歌山県 中平喜祥
介護難民といわれるわれも一人にて明方の夢でデモをしていた
〈評〉発達した資本主義国の日本でのこの「難民」への怒り。
東京都 若林義文
中国の「北・中・南」支を縦断する関東軍の兵は餓死せり
〈評〉旧陸軍の精鋭と言われた関東軍兵士のあわれさである。
新潟県 加茂川ハル子
大正の男の笑顔は恥なのか我のみ笑顔の夫との写真
〈評〉夫のことを、かく歌いながら妻の心はやさしいのである。
岐阜県 和田昌三
梅雨入りと宣伝されし次の日より三十度前後の快晴続く
〈評〉さりげなく歌いながら気象予報のはずれを皮肉っている。
東京都 すヾ木すみ江
入院の夫を見舞いに行く坂は/梅・桜・白き木蓮・ばら・つつじ/くちなしの残花、いまは紫陽花
〈評〉自由律の歌。花の名をつらねて夫の長い入院を嘆くか。
宮崎県 天水貞照
若いひとみ真剣に聞けば戦争を語りゆくわれもまた熱くなる
〈評〉戦争体験を若い人に伝えてゆくとりくみの一コマである。
福井県 元山章一郎
骨折の妻に代わりて家事しごと老ろう介護梅雨空の日び
〈評〉予期せぬ妻の骨折に、家事や介護で気の重い梅雨どき。
東京都 山崎元
改憲の発議にかかわる議員ゆえ選挙公約念入れて読む
〈評〉「改憲」の問題の本質をさらにつきつめようとしている。
2007年8月15日発行 不屈 №398