第33回全国大会
活動報告と運動方針(案)
治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟中央本部
二〇〇七年九月十二日~十三日東京・全労連会館
一、当面の重大な情勢と同盟第33回全国大会の任務
来年三月には、治安維持法国賠同盟創立四〇周年を迎えます。わが同盟にとって、歴史的意義をもつ節目の年であります。同盟第33回全国大会は次の任務を持って開かれます。
①憲法改悪など「戦争する国」を阻止するため同盟の運動が果たすべき役割を明確にすること。
②前大会後二年間の活動から教訓をくみだし、運動と組織の新たな前進をめざす方針を打ち出すこと。
③次期大会までの活動方針を具体化し、それを推進する中央本部役員を選出することであります。
(1)「憲法九条」改悪とのたたかいでは、アメリカの改憲圧力と、財界を代表する経団連の改憲旗ふりの下で、安倍首相は、自分の任期中に憲法改定を行うことを公言し、教育基本法改悪や改憲手続法を次々に強行採決してきました。しかも、過去の侵略戦争を正当化し、戦前・戦中の日本こそ「美しい国」だったとして、その実現をめざす勢力「靖国派」が、改憲勢力の中心に座り続けています。しかし、彼らが衆議院の圧倒的多数を占めているとはいえ、安倍内閣の支持率低下にもみられるように、国民の世論と国会内の力関係は、明らかに大きな差があります。国民投票での過半数を獲得出来なければ憲法を改定することは出来ません。いま、わが同盟と日本の民主勢力にとってもっとも重要なことは、憲法改悪反対の一点で、思想、信条、政治的立場の違いをこえて共同をひろげ、国民多数派を結集する運動を前進させることです。最近の世論調査でも、九条改憲反対の声が年々増え、とくに環境権やプライバシーの保護を憲法に加えるべきだという人々を含めて「安倍内閣のもとでの改憲には反対」という声が多数をしめていることは重要です。ここには全国で六千をこえて広がっている「九条の会」をはじめ全国での草の根からの歴史的な運動の力が反映しています。
改憲派がどんな仕掛けをつくろうと、国民の多数が「ノー」といえば憲法改定はできません。憲法改悪に反対するゆるぎない国民的多数派をつくるために、同盟活動四〇年のもてる力を発揮し全力をあげてたたかおうではありませんか。わが同盟は、そのために次の諸点を強く訴えて闘いぬく決意です。
①憲法改定の目的が、日本をアメリカ言いなりに「海外で戦争する国」づくりにあること。
②この「戦争」とは、イラク戦争に見られるようにアメリカの侵略戦争への参戦であること。
③憲法九条改悪は、靖国参拝、「つくる会」の歴史教科書、日の丸・君が代強制など、皇国史観と侵略戦争美化、植民地支配肯定という歴史の事実をねじ曲げる歴史認識と一体であること。
④「海外での戦争をする国」のためには、ビラまき弾圧、国民を監視する自衛隊の情報保全隊など、戦争に国民を動員する国内体制づくりが強められ、憲法の平和と人権、民主主義の諸条項の侵害、教育基本法改悪、共謀罪創設など、戦争する人づくりと国民に対する弾圧のくわだてがすすんでいることです。わが同盟は、国民の過半数を結集する運動を推進するために、全国各地の「九条の会」とともに、憲法改悪反対の一点で広く国民的共同をつくりあげるために奮闘します。この闘争は、二一世紀の日本の進路を左右するたたかいであり、世界とアジアの情勢にもかかわる歴史的な闘争であります。戦前、戦中、治安維持法と特高警察の残虐な弾圧のもとで、侵略戦争と暗黒政治に反対してたたかった治安維持法犠牲者たちは、戦後の憲法に恒久平和と民主主義、人権尊重と生活擁護の諸原則を刻み込むうえで、大きな歴史的役割を果たした先覚者です。この伝統を正しく受けつぎ、全同盟員が憲法改悪を許さぬ闘争に積極的に参加し歴史的使命を果たそうではありませんか。
(2) 現在、イラク占領を続けているアメリカは、その侵略的な世界戦略のもとで、米軍再編をすすめ、特に「日米軍事同盟」の地球的規模での侵略的強化に力を入れています。その特徴は、
①日米軍事同盟をイラク戦争に続く先制攻撃の戦争に、世界のどこへでも参戦してゆく態勢をつくる。
②在日米軍と自衛隊の基地の共同使用の拡大、合同作戦の展開など米軍に自衛隊が従属する一体化をすすめる。
③米軍座間基地へのワシントン米陸軍第一軍団司令部の移設、横須賀への米原子力空母の配備など、在日米軍基地の司令部機能と機動性を強化して、在日米軍基地を恒久化しようとするものです。
しかし、今日では東南アジア友好協力条約の締結、EU憲法の策定、南米共同体の結成。また、イラク侵略・占領に加担した有志連合三八ヵ国の過半数が撤退する状況にあります。わが同盟は、憲法改悪反対と結合し、米軍と自衛隊のイラクからの撤退を要求してたたかうとともに、日米安保条約破棄、米軍基地撤去のために奮闘します。
(3)また小泉政権から安倍政権が引き継いだ大銀行・大企業を擁護する構造改革路線は、国民の貧困と格差を増大させ、これに加えて定率減税廃止、年金課税の強化、介護保険料、国民健康保険料の値上げで「七兆円の負担増」、さらに消費税率引き上げ、庶民大増税路線による苛酷きわまりない生活破壊がもたらされようとしています。私たちは戦前、世界大恐慌の犠牲を庶民にかぶせ、侵略戦争に突入した歴史を知っています。また、戦争する国づくりと裏腹の国民生活破壊と対決して闘います。
(4)戦前・戦中最大規模の言論弾圧事件と言われた「横浜事件」の第三次再審請求に対し、今年一月の東京高裁は「無罪要求」を斥け「免訴」としました。第一次請求(八六年)以来、現在四次再審裁判の上告審が横浜地裁でたたかわれています。「横浜事件」は、特高警察の残虐きわまる拷問の結果、獄死者四名、釈放後死者一名、多数の重傷者を生みだし、三十数名が治安維持法違反として有罪とされました。同盟は、きたるべき上告審の再審で無罪をかちとるために全面的支援をするとともに、治安維持法体制下の暗黒政治を糾弾し、侵略戦争の責任を追及して闘います。そして、「横浜事件」の犠牲者を含む治安維持法犠牲者の「国家賠償法」立法化の運動をさらに力強く発展させます。
(5)戦後六二年、侵略戦争と暗黒政治下の戦争犯罪と人道に反する行為は、国の内外からきびしく追及されてきました。中国人、朝鮮人などの強制連行・強制労働問題、従軍慰安婦問題、七三一部隊による生体実験、毒ガス遺棄被害事件、南京大虐殺、平頂山虐殺、ソ連抑留者問題、中国残留孤児問題、空襲被害など、六〇件におよぶ訴訟や国家賠償要求運動が発展しています。わが同盟は、これらの戦後補償要求を共に連帯してたたかうとともに、戦後生まれの世代が圧倒的多数となっている状況のなかで、正しい歴史認識を若い人々に普及定着させる活動に力を入れます。
(6)わが同盟は、二一世紀の日本の進路を左右するこれらの歴史的闘争に取り組みながら、これと固く結合して
①治安維持法犠牲者への謝罪と賠償を実現する闘争。
②治安維持法犠牲者、先覚者を顕彰する活動。
③治安維持法国賠同盟の組織を拡大強化する活動。
この独自活動に力強く取り組み、これらの活動を広範な国民の中にひろめてゆくことが必要です。国連総会は二〇〇四年、二〇〇五年五月八~九日を第二次大戦終結「記憶と和解の日」とし、毎年この日を記念しようと満場一致で宣言しています。これに比べて日本では、侵略戦争に反対し、主権在民をかかげ生命をかけてたたかった治安維持法犠牲者の業績は、未だ一部先進的国民の中の記憶と認識にとどまっています。世界に名だたる悪法といわれた治安維持法と特高警察の弾圧下で、逮捕された人は数十万人、小林多喜二のように虐殺された人は八〇人、拷問・虐待・病気などによる獄死者一六一七人、逮捕後送検された人七万五六八一人、投獄など実刑を受けた人五一六二人にものぼっています。この歴史的事実と犠牲者、先覚者たちの不屈のたたかいを広く国民の中に語りつぐことが改めて重要になっています。日本会議、日本会議国会議連やその周辺団体、侵略戦争美化、植民地支配の肯定という歴史的事実をねじ曲げる歴史認識を振りまいています。これは治安維持法による弾圧をも正当化しようとするものです。同盟は、「再び戦争と暗黒政治をゆるすな」のための正しい歴史認識を広範な国民のものとするために奮闘するものです。
来年の三・一五弾圧八〇周年、同盟創立四〇周年の前年にあたる本大会において、治安維持法犠牲者への謝罪と賠償を実現するため全力をあげて奮闘する決意を表明します。
2007年8月15日発行 不屈 №398